説明は非弁行為なのか
ある会社から電話で相談があった。
電話の相手は、社長の奥様。
話を整理すると、こういうことらしい。
7月に従業員が交通事故を起し、相手の保険会社が治療費を払ってくれている。
事故のあと、従業員には自宅で休むようにと言った。
しかし、その人が休むと仕事が回らないので困る。
できれば、他の人を雇いたいので、その人には辞めて欲しい。
その説明の途中に、「どうしていいのかわからない」「夜も眠れない」などの言葉が出てきて、追い詰められているのがよくわかる。
顧問社労士がいるのだが、
「解雇はできません」、「労災かくしは犯罪だ」、
と言われたようで、何がいけないのか、ただ、おびえた状態。
また、従業員からも説明を求められているが、何をどう説明していいかわかないので、社労士にお願いすれば
「非弁行為になる」「会社と話はするが従業員とは話しません」
と断られたらしい。
急遽、新幹線でその会社まで行くことにする。
午前中、会社に到着。顧問社労士から状況を確認。それを、社長・奥様に説明し、会社の意向を確認する。
午後、従業員(家族同伴)に説明し、退職してもらうことに合意。
このとき、従業員の家族の方が言った言葉、
「円満に解決できてよかったです」
そうなんです、7月の事故以来1ヶ月、会社も従業員も、何も分からない状態で不安が募る状態。
最後は、従業員は会社に対する不信感でいっぱいに、会社は従業員が何を言い出すか分からないモンスター社員状態。
今まで特に問題がなければ、特に小規模の家族経営の会社では、何かあったときにパニック状態になるのは当然。
それを、専門知識を持つ士業が、相手に理解できるように説明しなければいけないと思う。
また、会社の意向を確認し、法に違反していれば指摘し、その意向に沿った対処を行っていればどちらも1ヶ月を不安に過ごすこともなかったのではないかと思う。
「辞めて欲しい」を、解雇なのか退職勧奨なのかを確認し、違いを説明し、理解してもらわなくてはいけない。
いたずらに不安を煽るような説明は良くない。
「自賠責先行なので、労災の手続をしない」ではなく、また、交通事故があったときに、労災とは何か、相手の保険との関係を説明し理解してもらわなくてはいけない。
また、会社が従業員に説明して欲しいとの要望があれば、
それも仕事のうちだと思うのだがどうだろう。
士業は、「非弁行為」に注意しなければいけない。
しかし、時に「非弁行為」という言葉で、逃げてはいないだろうか?
翌日、社長の奥様から「昨夜はぐっすり眠れました」とFAXがありました。
by office-matsumoto | 2011-09-08