腰痛の労災認定基準
仕事中に腰を痛めることはあるものです。
しかし、それが「業務上」なのか、「日常的な動作」で痛めたのかによって判断は難しいと言われてきました。
厚生労働省では、労働者の発症した腰痛が業務上のものと労災認定できるかを判断する「業務上腰痛の認定基準」を公表しています。
基準では、腰痛を次の2つに区分して要件を定めています。
【災害性の原因による腰痛】
◇◆転倒した、腰を打った、等の外傷や、突発的で急激な強い力が原因となって筋肉等が損傷して生じた腰痛 ◆◇
負傷などによる腰痛で、次の(1)(2)どちらも満たすもの
- (1)腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められるもの
-
(2)腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること
※ 俗に言われる「ぎっくり腰」は日常的な動作の中で生じるので、たとえ仕事中に発症したとしても、労災補償の対象とは認められません。
ただし、発症時の動作や無理な姿勢など腰への強い力がかかったと考えられるときには、業務上と認められることがあります。
【災害性の原因によらない腰痛】
◇◆重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者が、日々の業務により発症した腰痛をいい、発症原因により、次の2つに区分して判断されます。◆◇
- (1)筋肉等の疲労を原因として腰痛
次のような業務に比較的短期間(約3か月以上)従事したことによる筋肉等の疲労を原因として発症した腰痛
・約20キロ以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務(港湾荷役 など)
・毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保時して行う業務(配電工 など)
・長時間立ちあがることができず、同一の姿勢を持続して行う業務(長距離トラックの運転業務 など)
・腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務(車両計建設用機械の運転 など) - (2)骨の変化を原因とした腰痛
次のような重量物を扱う業務に相当長期間(約10年以上)にわたり継続して従事したことによる骨の変化を原因とした腰痛
・約30キロ以上の重量物を、労働時間の1/3程度以上に及んで取り扱う業務
・約20キロ以上の重量物を、労働時間の1/2程度以上に及んで取り扱う業務
なお、腰痛は加齢による骨の変化によって発症することが多いため、その変化が「通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える」場合に労災補償の対象となります。
【既往症または基礎疾患者の疾病の悪化】
椎間板ヘルニアなどの既往症または基礎疾患のある労働者が、仕事によりその疾病が再発したり、重症化した場合、その前の状態に回復させるための治療は労災補償の対象になります。
【職場における腰痛予防対策指針】
腰痛の予防には、作業管理、作業環境管理、健康管理及び労働衛生教育を適切に行うことが必要です。
(1)作業管理 労働者の負担を軽減するために、作業内容や作業方法などを適切に管理しましょう。
例えば、
・作業のうち、自動化できるものは何か、台車を使うなど作業内容、作業方法を見直しましょう
・作業時間や、同じ動作の繰り返しがないか 作業を見直しましょう
・作業靴は足にあったものをはく、腹帯などの補装具の使用も考えてみましょう
(2)作業環境管理 労働者に負担がかからないよう環境を見直してみましょう
・暑さ・寒さを感じないよう温度管理をする
・作業場所、通路、階段などの照明も適切かどうかチェックしましょう
・滑りやすい床、不自然な姿勢を取らざるを得ない作業場所になっていないか確認しましょう
・棚の位置や工具箱の位置が遠く、無理な動作になっていないか確認しましょう
(3)健康管理 重量物取扱作業、介護作業など腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者は、腰痛健康診断を行いましょう
・作業前体操、腰痛予防体操も効果的です
(4)労働衛生教育 重量物取扱作業、介護作業などに常時従事する労働者に対しては、配置前や必要に応じて腰痛予防のための労働衛生教育を行いましょう
詳しくは、『職場における腰痛予防対策指針』(PDF)、腰痛予防体操(PDF)
by office-matsumoto | 2012-09-27