社員と会社を守る社有車の安全管理
[ポイント]
1. 事故を未然に防ぐためにも、社有車や運転者の管理にかかわる各種規程を整備しておきましょう。
2. 近年、病気・服薬が原因で運転中に意識が消失し、重大な死傷事故につながるケースが頻発しており、会社としては運転者の健康状態を的確に把握することが求められています。
1.社有車の管理規程と管理資料
現代の企業活動において、利便性および機動性をもたらす車の利用は不可欠です。
一方で、いったん事故が発生すれば大きな損害をもたらします。
このような事態を未然に防ぐため、企業は日頃から社有車の安全運転管理を実践しなくてはなりません。
具体的には、①管理規程を整備し、②健康管理情報を含む管理資料で実態を把握し、③管理部署を明確化する必要があります。
※一般的には、「社有車管理規程(車両管理規程)」として1つの規程として整備することが多いですが、ここでは、規定する内容を明確にするため、各項目別に細分化した規程で整備することを前提に説明します。
(1)車両の管理
車両の管理には、①車両の保管管理、②性能・安全の維持管理、③燃料・消耗品の管理、④経費の管理等があります。
これらは、車両台帳、車両修理費、燃料費、日常点検記録簿、運転記録等により管理します。
規程名 | ポイント |
社有車修理規程 | 修理依頼の手続き・修理費の負担等 |
社有車点検規程 | 日常点検・法定点検・修理箇所発見時の対応等 |
このほか「社有車給油規程」「駐車場管理規程」等、管理の実情に合わせた管理規程を策定します。
また、営業車両を社員が自宅に乗って帰る、あるいはマイカーを業務で使用することがあります。
公私混同の利用は原則禁止すべきですが、やむを得ない場合の対応ルールを定め、私的利用の際の事故は会社に責任が無いことを明確にしておくことが、リスク回避の点からも望ましいといえます。
(2)運転者の管理
社有車管理の要は、運転者の管理にあります。
事故防止は最終的には「運転者自身の安全運転」にかかっているからです。
運転者の管理には、①適性判断、②指導教育、③運転者の監督等があります。
規程名 | ポイント |
運転者教育実施規程 | 対象者、教育内容・頻度、企画・運営責任者等 |
運転者適正管理規程 | 免許証、健康管理、運転適性診断、違反時の懲罰等 |
運転者の管理は「運転記録証明書」で事故違反歴を確認し、「運転適性診断」で運転の癖を把握し、安全運転につながる指導を定期的に行います。
さらに、運転者に関する規程で特に重要なのが、健康管理です。
近年、病気・服薬が原因で運転中に意識が消失し、重大な死傷事故につながるケースが頻発しており、会社としては運転者の健康状態を的確に把握することが求められています。
健康診断で異常の所見があると診断された場合は、就業状況、労働時間、深夜業務の回数等の情報を医師に提供し、運転業務に関する意見を聴き、必要があれば医師との面談を実施します。
運転業務に携わる従業員には、健康診断以外でも、運転に支障を起こす可能性がある疾病が判明した場合、あるいは運転に支障のある薬を処方された場合は、必ず会社に届け出ることを義務付け、医師に就業上の意見を聴き、運転業務の可否を判断します。
(3)運行の管理
運行の管理として、①適正な車両配置、②運行実態の把握、③運転時間の適正化等があります。
規程名 | ポイント |
運行管理規程 | 運行管理者、運転者の選任、時間管理、管理体制等 |
安全運転管理者規程 | 選任基準、業務内容等 |
事故対策規程 | 事故時の対応 |
自動車運送事業者は、運行の安全を確保するため、営業所ごとに、国家資格者である運行管理者を選任しなければなりません。
一般企業の場合でも、一定台数以上の自動車を有する事業所には安全運転管理者(右表参照)を選任することが法律で義務付けられています。
選任基準を満たさなくなった場合や、選任した安全運転管理者等が退職や転勤等で事業所からいなくなる場合、資格要件を満たさなくなった場合は解任をします。
選任・解任ともに15日以内に都道府県の公安委員会に届け出ることが必要で、違反した場合は「5万円以下の罰金」となります。
選任基準 | 資格要件 | |
安全運転管理者 | ・乗車定員が11人以上の車両を使用 |
・20歳以上の者(副安全運転管理者をおく場合は30歳以上) |
副安全運転管理者 | ・自動車の台数が20台〜39台で1人 |
・20歳以上の者 |
2.安全運転の管理体制
安全運転を実現するためには、従業員一人ひとりが安全運転を実践するとともに、それを管理する部署が必要です。
しかし、社有車の管理の範囲は広いため、特定の部署に管理を集中させることは難しいといえます。
たとえば、車両台帳や保険関係は総務で管理することが多いのですが、鍵や点検記録簿の管理や修理依頼などは、実際に使用する部署が管理した方が管理しやすいでしょう。
また、運転者の健康情報の取り扱いについても、個人情報保護のガイドラインに沿った扱いが必要となり、総務または人事が担当するのが適当です。
安全運転管理者および副安全運転管理者の主な業務は、日常的な社有車の安全運転にありますが、社有車の管理で考えると、上記で述べたように、社有車の経費、環境や省エネに配慮した運転、運行計画、運転者の健康管理、リスクマネジメントや企業の責任といった広い視野が必要になります。
そのためには、総務部長などを統括責任者として設置し、社有車の管理を行っていく必要があります。
by office-matsumoto | 2016-08-02